◆ 外来手術室の紹介(永本 敏之)  --------------------------<1>
◆Topics「水晶体班の活動」(永本 敏之) ----------------------<2>
◆Topics「ピギーバックIOLにおけるレンズ間混濁」(永本 敏之) ---<3>
◆ 外来予定表            --------------------------<4>
◆ アイセンターイベント情報     --------------------------<4>
◆ 編集部より            --------------------------<4>

 

外来手術室の紹介  永本 敏之

 外来手術室は、新外来棟がオープンした平成11年1月からスタートした、まだまだ若い部門である。眼科の樋田教授を室長とし、平沢主任以下3人の看護婦と1人の補助婦さんという少人数で運営されている。建設計画当初は眼科専用手術室となる予定であったが、最終的に他科も利用できる外来手術室という形となり、オープンした。そういった経緯もあるため、外来棟5階のアイセンターの隣に併設されており、手術室は4部屋であるが、そのうち2部屋は眼科専用で、Zeissの天井懸垂型の手術顕微鏡が装備されている。眼科にとっては非常に利用しやすい体制となっている。手術装置に関しても、白内障はレガシー、硝子体はアキュラスが装備されており、申し分ない環境である。眼科手術は、日勤帯であれば、月曜から金曜まで毎日可能であり、入院患者の手術も可能である。このため、現在のところ外来手術のほとんどは眼科の手術となっている。外来手術室における、平成11年度の総手術件数は917件であるが、このうち眼科が366件(約40%)となっている。平成12年度は、総手術件数が1277件、眼科777件(約60%)であり、急増している。眼科手術のほとんどは白内障手術であるが、網膜硝子体手術を外来手術室で行う割合も徐々に増えつつあり、網膜剥離手術を日帰りで行う場合もある。今後も外来手術室で手術を行う割合は増加していくと思われるが、眼科の総手術件数自体は現在マキシマムに近い状態であり、執刀医となれる医局員の数が増えない限り増加は難しいと考えられる。
 本年度から新しい病棟が着工する予定であり、その中に新しい中央手術室も建設されるため、他科の外来手術が新中央手術室で行われるようになれば、外来手術室が眼科専用手術室となる可能性がある。現在のところ外来手術室では全身麻酔の手術は難しく、夜間の手術は一切できないが、今後の動向によっては全身麻酔や夜間の手術も可能になる可能性がある。もしそうなった場合は、眼科の手術はほぼ100%が外来手術室で行うことができるようになるため充実したアイセンターとなる。まだ決定の段階ではないが、良い方向に流れていくことを願っている。皆様もお祈りしてください。

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Topics 「水晶体班の活動」

 水晶体斑は、藤原教授を筆頭に、永本、山本、高間が所属していますが、藤原教授は外来と学会活動、山本先生も眼科のコンピューター・情報処理関係の仕事が忙しく、外来のみで、高間先生は研究のみとなっています。したがって、専門外来、手術、研究、学会活動をフルに行っているのは現在のところ永本のみであり、手術を中心に水晶体の臨床を行う医師を現在募集しているところです。
 杏林では私が赴任するまで小切開超音波手術を中心とする近代的な白内障手術の専門家がおらず、適切な指導医がいなかったというのが現状です。このため現在は、月3回のウェットラボと毎週火曜日の白内障手術勉強会を開催し、私が直接研修医を指導していますが、白内障手術の専門家と呼べる人材が育つのは、まだまだ先のことと思われます。関連病院での出張を終え、大学に帰室した医師が水晶体の臨床を専攻してくれることが望ましいのですが、残念ながら帰室希望者自体が少ない状態であり、今のところ水晶体をやりたいという専攻医は出てきていません。これを読まれている先生方の中で、もし水晶体の臨床を本格的に勉強したいという先生をご存知の方がおられれば、是非永本までご連絡いただきたいと思います。
 白内障手術件数は、現在年間800件ほどですが、その内私自身の執刀は約300件で、難症例も多数含まれており、バラエティに富んだ症例を扱っております。また杏林は樋田教授、平形助教授をはじめとする網膜硝子体斑が充実しており、白内障と網膜剥離を併発しやすいアトピー性皮膚炎などの患者を網膜硝子体斑と協力して多数治療しています。その他に先天白内障をはじめとする小児の白内障にも積極的にIOLを挿入しており、現在まで良好な手術成績を得ております。
 研究活動として、臨床では、成熟、過熟、膨潤などの白色白内障に対するトリパンブルーによる前嚢染色を日本で最初に導入し、その有用性を検討しております。また、新しい拡散型の粘弾性物質であるビスコートもいち早く導入し、検討しております。他に、アトピー白内障、低年齢の小児の白内障、水晶体嚢拡張リングの有用性についても検討中です。
 基礎的研究としては、後発白内障の予防、前嚢下白内障の成因、水晶体上皮細胞の分化転換機構、水晶体の創傷治癒機転、房水の水晶体上皮細胞に対する作用などに力をいれて研究しておりますが、人材不足が悩みの種です。
 学会活動として、1999年4月以降2001年3月までの2年間における水晶体斑からの全国または国際学会での発表は、全部で15題です。このうち基礎研究発表が7題、臨床研究発表が8題であり、発表した学会は、日本眼科学会2題、ARVO2題、白内障・眼内レンズ学会3題、臨床眼科学会2題、眼科手術学会4題、水晶体研究会1題、ICER1題となっております。その他に地方学会での永本の招待講演が13題ありました。
 末尾となりましたが、先生方には今後とも患者様を紹介してくださいますようお願い申し上げます。

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Topics  「ピギーバッグIOLにおけるレンズ間混濁」

 短眼軸長の高度遠視眼における白内障手術では、1枚の眼内レンズ(通常30Dが最大度数)では矯正が不十分で、術後に遠視となってしまうため、最近は、2枚の眼内レンズを挿入するようになってきている。これをピギーバッグIOLというが、術後の問題点も指摘されつつある。そのひとつが今回紹介する2枚の眼内レンズの間に生じる混濁(レンズ間混濁、interlenticular opacification)である。
 レンズ間混濁の報告は、Gayton1とShugar2が昨年のJournal of Cataract & Refractive Surgeryにほぼ同時期に発表したのが最初である。IOL光学部の周辺から始まり中央に向かって徐々に進行する。周辺部のみの混濁は、PMMAやシリコンでも起こるが、混濁が中央にまで進行するのはアクリルレンズに特徴的なようである。中央まで混濁し、視力低下をきたした場合は、手術的にIOLを除去する以外に適切な方法がないのが現状であり、重要な合併症である。
 Gaytonが2例、Shugarが1例報告しており、この3例に共通している点は、2枚のアクリソフレンズを嚢内に挿入していること、さらにCCCがやや小さく、エッジが360°にわたって前方のIOLの光学部に被っている点である。Gaytonの報告では、組織学的検査が行われており、レンズ間に認められたのは、水晶体線維細胞と膨化したbladderまたはWedl cellsと水晶体上皮細胞であり、後発白内障の一種であると考えられている。レンズ間混濁の発生機序としては、術後にも限りなく続く赤道部での水晶体線維の再生により、再生された水晶体線維が、いつしかレンズ間にも侵入すると考えられている。この場合CCCのエッジが360°にわたってIOL上にあるという点が重要である。もしCCCのエッジの一部が光学部より外側にあれば、エッジは後嚢と癒着する。しかし、IOL上にあるエッジに近い部分では癒着が起こらず、開口している。この場合、赤道部での水晶体線維再生が進行しても、この開口部から水晶体線維は押し出され、2枚のレンズが密着しているレンズ間の中央部にまでは侵入しない。しかし、CCCのエッジが全周にわたって光学部と密着していると、閉鎖空間が形成された状態にあり、果てしなく再生される水晶体線維は、いつしかレンズ間の中央にまで達することとなる。
 したがってレンズ間混濁の予防法としては、光学部より大きなCCCを作るか、または1枚のレンズを嚢内に、そしてもう1枚のレンズを嚢外に固定するのが有用であると考えられている。
 皆さんも、もしアクリソフでpiggyback IOLをする場合は、大きなCCCにするか、1枚を嚢内、もう1枚を嚢外に入れましょう。

文献
1. GaytonJL, Apple DJ, Peng Q, et al.: Interlenticular opacification: Clinicopathological correlation of a complication of posterior chamber piggyback intraocular lenses. J Cataract Refract Surg 26:330-336, 2000
2. Shugar JK, Keeler S: Interpseudophakos intraocular lens surface opacification as a late complication of piggyback acrylic posterior chamber lens implantation. J Cataract Refract Surg 26:448-455, 2000

Eye Center Photo-Album

5月のオープンカンファレンスでは、お二人の先生に大変興味深い内容のご講演をいただきました。

5月16日はMay Griffiths, PhDによる「Novel biopolymer scaffolds for development of artificial corneal and scleral tissues」、
5月23日は 安藤伸朗先生による「眼科医と倫理」でした。
 
上の写真は、May Griffiths, PhDの御講演の様子(5/16)。右は安藤先生と2人のお嬢様(5/23)。

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外来予定表(2001年4月〜)

アイセンター・イベント情報

●アイセンター・オープンカンファレンス

 国内外の先生にインフォーマルな場で臨床、研究テーマについて講演していただくシリーズです。外来棟の10階
 第2会議室で6:30PMから行われます。アイセンター外の先生方も是非ご参加ください。

  6月20日(水)「スウェーデンのハンディキャップの考え方」「患者の立場から」
          田村靖子様(NPO法人アイファーム副理事長)

  7月25日〔水)「ICG染色と硝子体手術」(仮題)
           門之園一明先生(横浜市立大学医学部眼科講師)

  8月22日(水) 「緑内障の診断と治療」
          山上 淳吉先生(JR東京総合病院眼科・東京大学医学部眼科)
  10月24日(水)タイトル未定(網膜)
          野田 徹先生(国立医療センター感覚器センター 眼科部長)

●第36回東京多摩地区眼科集談会
  9月29日(土)14:00〜 臨床講堂にて10月27日(土)15:00〜 臨床講堂にて

●第3回西東京眼科フォーラム
  10月27日(土)15:00〜 臨床講堂にて

編集部より

 研修医の段階から白内障手術は皆早くやりたがるのが普通です。しかし単なるvolume surgeonでなく永本講師のように臨床と基礎の研究を含めた白内障の専門医をめざすとなるとなかなか希望者はいません。網膜硝子体の方も忙しくてストレスが多いので、外からのフェローはいるけれど中からの指向者は少ない現状なのです。永本先生イライラせず希望者の出現を待ちましょう!(TH)