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◆ 編集部より |
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新しい研修システム
三木 大二郎
アイセンターでは研修医(専門医を習得するまでの専攻医も含める)をいかに教育していくかいつも悩まされています。従来の教育システムは外来班と病棟班に分けて約3ヶ月ごとにローテーションするという方法でした。2004年度からスーパーローテーションシステムが全国で導入されました。これに伴い、2004年度の研修医としての眼科入局者は一人もなく、 人数不足の点から、また、従来の方法を見直す意味も含めて教育システムの改革が必要であると考えました。 現在、アイセンターには角膜外来、水晶体外来、網膜硝子体外来、黄斑・眼炎症外来、緑内障外来、小児・斜視弱視外来、眼窩外来の7つの専門外来が存在しています。従来の外来班、病棟班のローテーションシステムではこれらすべての専門外来を見ることはできず、幅広い知識を身につけることが難しいと考えました。そこで、約10名の研修医を1.網膜硝子体班・眼窩班、2.水晶体班・小児・斜視弱視班、3.黄斑・眼炎症班・角膜班、4.緑内障班、5.外来担当(アナムネ、外来検査担当)の5つのグループに分け、それぞれのグループを2ヵ月ごとローテーションするシステムに変更しました。網膜硝子体班・眼窩班は入院手術が多いため1期間4人から5人がローテーションします。外来班は2人、そのほかのグループはそれぞれ1人ずつローテーションします。ローテーション中は各専門外来に陪席し、手術症例の病棟担当医となり臨床訓練をうけています。また、各専門外来のリーダーまたはフェローが指導医となり直接指導し、ローテーション終了時には10項目にわたる採点表によりローテーション中の理解度、学習態度などを評価しています。月1から2回程度、各指導医が順番で全研修医を集め基本的な内容のクルズスを行っています。
研修医からは幅広く眼科の勉強ができ、将来専門を選ぶ上でこのローテーションが有用であると好評のようです。一方、指導医からはローテーショングループの組み分けによっては外来日や手術日が重なってしまうなどの問題が指摘され、まだまだ改良の余地があるようです。
来年度も新入医局員が入ってこない苦しい状況ではありますが、せっかく出来上がったローテーションシステムをつぶさないよう改良を重ね、杏林アイセンターの教育システムを理解していただき、こういうシステムの下で勉強していきたいと思う若い医師が入局を希望するようなシステムを確立したいと思っています。教育システムに付きご意見などございましたらご教示ください。参考にさせていただきます。
杏林アイセンターの設立とともに、水曜日の午後に黄斑疾患外来を始めさせていただきました。外来開始以来、早々と患者が増加してきて、最近では患者の待ち時間が長い場合があり、非常に悩んでおります。しかし、医学的な診断と治療以外にも、主に高齢の患者のニーズに合わせて、細かい分かりやすい説明、心理的なサポートおよびロービジョンの紹介などを行うため診療に時間がかかります。今までは、何とか患者の理解を求めた上で毎週、夕方の遅い時間まで外来をやってまいりました。しかし、4月からは最近、留学から帰ってきた山岡青女先生が黄斑疾患グループメンバーの菅原道孝先生、川真田悦子先生、杉谷篤彦先生に加わりますので、待ち時間の短縮に繋がることを期待しております。
今回のニュースレターでは、加齢黄斑変性(AMD)に合併する脈絡膜新生血管(CNV)のための新しい治療について簡単に紹介したいと思います。経瞳孔温熱療法(TTT)と光線力学療法(PDT)は現在、杏林アイセンターで使用できますが、他にも様々な「薬物療法」の治験にアイセンターは参加している、あるいはこれから参加する予定ですので、これらについても少し述べたいと思います。
● TTT
アイセンターは、本邦でのTTTパイロットスタディを初めて実施し、オカルト型CNV患者の平均観察期間35週の検討では、滲出変化の減少は75%の症例にみられ、視力の維持、または改善は80%にみられました(2001年日本網膜硝子体学会)。その後、アイセンターはJapan TTT for CNV in AMD(JTCA)スタディという前向き多施設無作為臨床試験を担当することになりました。この臨床試験は、2つの出力を比較し、安全性および効果を日本人眼に評価することが目的です。20大学病院が参加し、99例がエントリーされました。現在、1年間の経過観察がちょうど全例に終了している段階でデータを回収中です。図1にTTTの代表例を示します。
図1.TTTの症例:(a)治療前 (b)治療後9カ月
● PDT
日本に於けるPDTの応用は、5年ほど欧米に遅れてしまい、ようやく昨年の夏に厚生労働省から認可されました。アイセンターでは、PDTの第一症例が昨年の11月に行われて以来、毎週2〜3例程度行われております。PDTはTTTと同様に、弱い赤外線半導体レーザーの照射を用いますが、PDTはレーザー照射の直前に、ビスダインという光感受性薬剤を点滴で投与する必要があります。従って、PDT治療後5日間は日光、あるいは強いハロゲンランプの様な照明を避けなければなりません。そのため厚生労働省の基準では、初回治療の際、治療後48時間の入院が義務づけられており、患者の時間的、経済的負担はTTTより大きくなります。それなりにTTTより大きなメリットを期待したいと思いますが、今後、アイセンター、他の施設ともに検討する必要があります。経過はまだ2カ月しかありませんが、図2にアイセンターで行われたPDTの症例を示します。
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● anecortave acetate (Retaane(R))
anecortave
acetateはアルコン社が開発したステロイド骨格を有する化合物で、新生血管形成阻害作用をもつとされています。現在、日本では第相治験で11大学病院にて検討中ですが、杏林アイセンターでも症例エントリーが行われております。治験プロトコールでは、3つの用量(3
mg, 15 mg, 30
mg)を無作為で比較検討し、一回投与後6カ月の経過観察し、その終了後に2回目の投与を検討します。全体の経過観察は1年間の予定です。投与法は、今までトリアムシノロンを経テノン嚢下球後注入した方法とほぼ同様ですので、患者さんにとっては容易であり、医師側も比較的安全に行うことができます。
● pegaptanib sodium (Macugen(R))
Eyetech社が開発したこの薬剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)の一つの受容体アイソフォーム(165番)を阻害するアプタマーです。現在、日本ファイザー社により杏林アイセンターを含め11の大学病院で治験を行われており、2つの用量(0.3
mg, 1.0
mg)を比較しています。投与法は、眼内(硝子体内)注射を用い、治験プロトコールでは6週間毎に合計9回投与するため、合併症の可能性を十分に考慮する必要のある治療です。最近の米国の発表によりますと、CNVのタイプを問わず、効果は「ほぼPDTと同様」ということでしたが、オカルト型CNVにはPDTより効果が上がる可能性があると示唆しています。
● ranibizumab (Lucentis(R))
Genentech社が開発したranibizumabはVEGF受容体を阻害するモノクローナル抗体ですが、pegaptanib
sodium
と異なって全てのアイソフォームをブロックする特徴があります。この薬剤も眼内注射の投与を要しますが、現在、米国では第。相治験が進行中です。本邦でもこれから治験が開始する予定です。
なお、Macugenィは米国FDA局にて昨年の12月に認可されましたが、RetanneィとLucentisィはまだ認可されていません。以上、滲出型AMDに対する治療の選択肢が近年、急激に広がりました。今後は引き続き杏林アイセンター黄斑疾患グループで検討していきたいと考えております。
ニュースレターの2004年秋号にモハマド君について紹介しましたが、その後の経過をご報告します。12月7日、モハマド君は聖隷沼津病院で樋田教授の診察を受け、視機能の改善の見込みがあるということで、再手術(外傷後3回目の手術)のため10日に当院眼科病棟入院となった。角膜下方に広く混濁と陥凹を認め視力低下の原因となっていました。14日、open sky下で前部硝子体切除、眼内レンズ縫合および角膜移植を施行しました。経過は順調かと思われたが、術翌朝から炎症が強く、術後2日目に予期せぬ再手術となりました。前房内に充満した白塊を除去し、白濁した眼内を硝子体切除試みました。感染性眼内炎と判断し眼内抗生剤投与も行った。術後は硝子体混濁も徐々に軽快、角膜移植片の拒絶反応もなく光をまぶしがっており今後の視機能の改善を期待しつつ28日に退院となりました。今後はヨルダンの病院で経過を見ることとなっています。退院時には日本語で心のこもった感謝の言葉をもらいました。大変なことも多かったですが彼の担当でよかったと感じた瞬間でした。10歳という年齢で多くの困難を乗り越えがんばっているハムディ、これからもファイト! 〈堀江 大介〉
モハマド君が杏林大病院に入院していたのは18日間だったのに、あまりに沢山の事があって3ヶ月くらい入院していたような気がします。言葉が分からなくて本を片手に四苦八苦したこと、食事が口に合わない彼に少しでも食べて欲しくて、季節はずれのザクロ(モハマド君は、ザクロが大好き)を探しに行ったり・・・思い出は沢山ありますが、なにより感謝しているのは、モハマド君や彼の伯父さん、仕事をこえて彼らに尽くした通訳さんの深い愛情と生きる姿勢を近くで感じ、学べたことです。また、私のお願いをいつもイヤな顔ひとつせずきいてくれた堀江先生にも感謝・感謝です。モハマド君の眼が少しでも良くなるよう、皆さんも祈っていて下さい。 〈東 雅美〉
新フェローの杉山和歌子先生を紹介します。1998年に新潟大学医学部を卒業後、同大学眼科に入局しましたが、個人の事情により昨年、地元の東京に戻りました。以前からぶどう膜炎に興味を持ち、若葉眼科で勤務しながら、毎週月曜日のぶどう膜炎外来に参加しています。
〈OPEN CONFERENCE〉
国内外の先生にインフォーマルな場で臨床、研究テーマについて講演していただくシリーズです。
外来棟の10階第2会議室で6:30PMから行われます。アイセンター外の先生方も是非ご参加ください。
2月23日 (水) 「25ゲージ硝子体手術」 井上 真先生 (慶應義塾大学眼科講師)
〈第43回多摩眼科集談会〉
4月9日〔土)14:00~16:30
場所:杏林大学医学部・大学院講堂(専門医認定事業、2単位)
特別講演:「極小切開白内障手術の現状と展望」(専門医認定事業、2単位)
常岡 寛先生 (東京慈恵会医科大学付属第三病院眼科助教授)
モハマド君の術後眼内炎は余りに炎症反応が早く出た上、臨床的にも見たことのない前房所見でした。多分水晶体嚢に包まれた弱毒菌が増殖していたのだろうと考えています。幸い経過中、移植角膜は常に透明でした。私達も病院もあくまで一人の患者さんとしてモハマド君を扱い、まわりの患者さんに迷惑のかからないよう努めました。マスコミもこの点を理解して対応してくれ嬉しく思いました。東、堀江両医師は本当によくやってくれました。〈 T.H. 〉