◆ フェロー募集! (平形 明人)
◆ 眼炎症部の近況とトピックス(菅原 道孝)
◆ 最近のOPEN CONFERENCE
◆ イベント情報
◆ 編集部より               

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フェロー募集

平形 明人

 病院にくるとすべての入院患者の診察が終わっていて、外来では鑑別診断の見逃しがなく、入院や手術の手続きも患者さんへの説明も完璧、患者一人に数枚必要とする承諾書や保険会社などの書類もためることなく、緊急手術を喜んで引き受けてくれ、助手に入れば術者がいらいらすることなく介助してくれ、研修医や医学生をよく教育し、学会や論文も進んで挑戦してくれる、そんなロボ・フェローはいないだろうか。昔Duke大学留学時代に、今25G vitrectomyのleaderの一人になっているDr. Carl Awhらが中心になって、そんなfellow skitを作って笑ったのを思い出します。たしかにFellowはスタッフからも研修医からも色々と期待され要求されて、忙しい日々を送ります。しかし、眼科の中で特に自分が興味を持つ分野に集中して訓練する毎日は、生涯をかけて仕事を充実させるための自信に繋がる貴重な経験です。どの分野も学問的に面白いばかりでなく、難病でつらい重篤な症例に出会います。スタッフのもとに集まる重篤な症例の治療経験を通じて、難病を患者とともに乗り越えていく強さを身につける機会は、一人前になるために大変重要です。困難な問題、ハードルを乗り越えることこそが一流の医師になるために大切で、それを数年で経験できる症例がアイセンターには集まっていて、スタッフとの討論、学会や論文発表の機会を通じて、あるいは研修医や後輩を教えながら、その経験を深めることができるのです。
 杏林でフェローを終了した多くの先生方をみても、この忙しい経験や訓練が一人前の医師に成長するために大きく役立っているのを実感します。杏林では、網膜硝子体、眼炎症(ぶどう膜炎)、水晶体、黄斑疾患を中心とするmedical retina、緑内障のfellowをいつでも募集しています。眼科専門医を取得、あるいはそれに相当する経験の眼科医の他施設からの応募を歓迎いたします。
フェローの概念などについては、2001年春のNewsletterで紹介いたしました。その後、システムとしてまだ確立するまでにはいたっていません。その大きな原因は、毎年応募してくる人数が定まらないことです。臨床研修医制度の改革とともに研修医が入ってこなかったこの2年の経験で、どの教育病院も実感したことですが、よりよい教育環境のためには適正な定員が必要です。医学部教育の変化、臨床研修医制度の改革とともに、各教育機関も医師教育のあり方が見直されて変化しつつありますが、眼科専門医制度をさらに充実させるためには、各大学などの教育病院が協力して、訓練医の定員を考える必要があると思います。
 フェローの充実が各教育病院の質を高めることに繋がることはいうまでもありません。杏林アイセンターでは、高い志を有する臨床医を養成するための環境つくりに力を入れています。人生を豊かにするために、よく学び、よく遊べということも大切にしたいと願い、他施設との交流も盛んにしようと思っています。2年前に、杏林からハワイのKokame先生のもとに山岡青女先生がfellowとして留学していい経験をつみました。杏林アイセンターのフェローが日本中あるいは世界中から集まってそれぞれが生涯の仲間になれればと夢みています。

フットボール観戦中のKokame先生と山岡先生
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眼炎症部の近況とトピックス
    菅原 道孝

左から) 瀧 和歌子先生,菅原 道孝先生
岡田アナベルあやめ助教授,渡邊 交世先生, 早川 るり子先生


 眼炎症部は平成11年から赴任された岡田アナベルあやめ助教授が中心となりさまざまなぶどう膜炎疾患に対する診断・治療に当たっております。スタッフは平成16年4月から東邦大学より国内留学中の菅原道孝と水晶体班の仕事の合間を縫って手伝いに来てくれている渡邊交世医師と平成16年より月曜日のみ外来を手伝っていただいてる瀧和歌子医師、平成13年より外来を手伝っていただいてる早川るり子医師の4人になります。外来は月曜日の午前に岡田助教授による初診の方を含めた外来、午後には眼炎症外来を行っております。
ここでは昨年一年間眼炎症外来を受診した新患患者の内訳と眼炎症斑による最近の学会発表について簡単にまとめましたので報告します。
〈杏林アイセンター眼炎症外来の新患患者の内訳〉

 2005年1月から12月までに眼炎症外来を初診として受診した96例について疾患別に分類しました。主な疾患について下に表1を示します。一番多かったものはサルコイドーシスであり、男性2例に対し、女性10例でした。次に多かったのは原田病、強膜炎でした。過去の報告と単純に比較は出来ませんが、今年の特徴として急性網膜壊死が4人と多く見られています。一人は20代の女性ですが、他の3人は60〜70代の男性で、原因は全例VZVでした。すでに今年も1人急性網膜壊死の患者が来院しており、今後増加していくか推移を見る必要があると思います。

症例数

%

サルコイドーシス

12

0.125

原田病

11

0.115

強膜炎

6

0.063

急性前部ぶどう膜炎

5

0.052

ベーチェット病

4

0.042

急性網膜壊死

4

0.042

結核性ぶどう膜炎

2

0.021

表1:2005年の新患患者別分布


〈サルコイドーシスに対する局所治療の検討〉

 1999年4月から2004年7月までの約5年間に杏林アイセンター眼炎症外来を受診し、サルコイドーシスまたはその疑いと診断された72例の治療成績についてまとめましたので簡単に報告します。年齢は平均54.1歳(14〜79歳)、性別は男性8例、女性64例、観察期間は平均23.2ヶ月(3〜62ヶ月)でした。治療方針については前眼部炎症に対してはベタメタゾンあるいはフルオロメトロン点眼と必要であればベタメタゾン(2mgもしくは4mg)結膜下注射を用いました。後眼部炎症に対してはトリアムシノロンアセトニド(20mg)の経テノン嚢球後注入を施行しました。前医でステロイドを内服処方されていた症例に関しては炎症の具合や全身状態を見ながら漸減し、適宜局所消炎治療を行いました。結果としては活動性を治療前後で比較すると診断群、疑診群とも有意に減少していました。ほとんどのサルコイドーシスの症例でステロイドの全身投
与を行わずとも局所投与のみで消炎は可能であると思われました。詳細は今年の臨床眼科3月号に掲載予定です。

〈小児前部ぶどう膜炎に対するメトトレキセート内服療法〉

 ステロイド局所療法で消炎できない小児前部ぶどう膜炎症例に対する少量のメトトレキセート(以下MTXと表記します)内服療法の効果を検討しました。対象は杏林アイセンターで治療した3例で男性1例、女性2例です。年齢は10〜14歳。診断は3例とも原因不明の両眼性前部ぶどう膜炎でした。原因検索については当院小児科にて全例精査しましたが、特に器質的疾患は見つかりませんでした。またMTX投与および副作用checkも小児科で行っております。観察期間は平均 27.7ヶ月でした。MTX投与前の治療はステロイド1時間ごとの点眼、眠前のステロイド軟膏点入を行っておりましたが、MTX投与後全例で炎症改善しており、またステロイド点眼も回数を減らすことが可能でした。また副作用も一時的な嘔吐のみで重篤なものは見られませんでした。MTXは慢性関節リウマチや若年性関節リウマチの第1選択薬となっており、また低用量でMTXを使用した場合は文献的に大きな副作用は認めていないことから今後さらに症例を重ね検討する必要があると思われます。

〈眼科治療におけるステロイド全身投与時の骨粗鬆症の管理〉

 ぶどう膜炎の患者でステロイド全身投与を施行した患者の、骨粗鬆症の有無および予防・管理について検討しました。対象は平成16年9月から平成17年2月までに当院アイセンターを受診したぶどう膜炎の症例6例(原田病5例、交感性眼炎1例)です。評価方法は2004年度日本骨代謝学会で策定したステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のガイドラインに基づき、骨密度を測定し、治療が必要な患者にはビスフォスフォネート製剤もしくは活性型ビタミンDの投与を行いました。
 結果は下に表2を示します。骨粗鬆症の治療群が上段、未治療群が下段です。治療群・未治療群とも3症例ずつで、未治療群で1例骨密度の低下、骨折を認めた以外は大きな変動は見られませんでした。ステロイド誘発骨粗鬆症の病態、予防について考慮した上でステロイドを使用していくのが望ましいと考えました。

診断

治療内容

骨密度
腰椎(%)

骨密度
大腿頚部(%)

骨折

治療群

62歳女

交感性眼炎

パルス3回

85→91

72→74

-

47歳男

原田病

パルス1回

80→81

88→85

-

44歳女

原田病

PSL200mg点滴2回
 パルス3回

77→80

78→78

-

未治療群

42歳女

原田病

パルス1回

106→102

114→112

-

28歳女

原田病

パルス2回

89→88

103→101

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最近のOPEN CONFERENCE


大野 京子先生(東京医科歯科大学眼科助教授) 2005.10.12


Nicholas J.Volpe,M.D.(Associate Professor of Ophthalmology
Scheie Eye Institute, University of Pennsylvania)

大越 貴志子先生(聖路加国際病院眼科医長)

2005.11.9

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イベント情報

〈OPEN CONFERENCE〉
国内外の先生にインフォーマルな場で臨床、研究テーマについて講演していただくシリーズです。
外来棟の10階第2会議室で6:30PMから行われます。アイセンター外の先生方も是非ご参加下さい。
        3月8日(水)  「光を用いた網膜機能のイメージング
               −網膜内因性信号計測法Functional Retinography−」
                角田 和繁先生 (東京医療センター臨床研究センター視覚生理学研究室長)

<第45回東京多摩地区眼科集談会> (生涯教育認定事業・2単位)
        場所:杏林大学・臨床講堂
        4月8日(土)14:00〜16:30
           教育講演:「病的近視の長期経過と治療」
            大野 京子先生 (東京医科歯科大学眼科助教授)

編集部より

眼科は臨床的には外科系に入り、手術が中心と考えられています。しかし、全身疾患の一症状としてあらわれる眼科疾患は多種多様であり、これが臨床的にも基礎研究面でも眼科学の面白い大きな理由でもあります。眼炎症外来はこの点で重要なアイセンターの大きな柱の一つです。手術領域だけでなく、眼炎症班にも外からフェロウを待ち望んでいます。〈 T.H. 〉

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