◆網膜硝子体班の活動 (三木 大二郎) |
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網膜硝子体班の活動
三木 大二郎
網膜硝子体班は現在樋田教授、平形教授をはじめ、三木、平岡、川真田、杉谷、二神、三井の8名が担当しています。ほとんどが杏林大学の出身ですが、毎年他大学から網膜硝子体フェローとして国内留学をされています。現在の二神先生は東京医科歯科大学から昨年の4月にフェローになられています。今までにも、慶應義塾大学、東海大学から国内留学され、皆さん一流の網膜硝子体術者になられ活躍中です。中でも、現在慶應義塾大学の講師である井上真先生は、25ゲージシステム硝子体手術を早くから導入され、本邦での第一人者となられています。
現在の網膜硝子体班の活動は、年間1000例以上の手術を行っており、ほとんど毎日緊急手術に追われている状況です。本来であればこれだけの手術症例の成績、合併症等を臨床研究として学会に発表すべきですが、年間数題しか発表できておりません。樋田教授、平形教授から毎回お叱りを受けております。
最近の臨床研究から主なものを上げてみますと、網膜剥離に対する硝子体手術とバックル手術の比較、増殖糖尿病網膜症の硝子体手術成績、黄斑円孔に対する内境界膜剥離の意義、白内障術後眼内炎、MIRAgelによる合併症、25ゲージシステム硝子体手術、強度近視眼の黄斑円孔網膜剥離および黄斑分離症に対する硝子体手術などがあります。この中からいくつかフェローの先生たちに要約を記していただき、ご紹介させていただくことにします。
また、最近、急性網膜壊死や内因性眼内炎が増加しており、これらに対する硝子体手術成績や適応についてまとめる必要があります。網膜剥離手術に関しても過去10年近くのデータをもとに再検討してみようと考えています。硝子体手術機器の進歩も眼を見張るものがあり、23ゲージ硝子体手術の導入と成績も検討する予定です。
一方、基礎研究では、平岡先生がイモリを使って網膜の再生を研究中です。もう間もなく論文となるのではないでしょうか。平岡先生はイモリの眼を扱わせたら天下一品です。しかし、現在のところ基礎研究はこの一題のみです。もっと若い先生に、博士号を目指し基礎研究を広げていただきたいと思います。
手術の多さを言い訳にしてなかなか臨床研究がされていないのが現状ではありますが、今後は悔い改めて、学会発表、雑誌投稿を積極的に進めていきたく思います。こうご期待を・・・。
下方弁状裂孔網膜剥離に対する硝子体手術について
平岡 智之
裂孔原性網膜剥離に対する手術法としては、強膜バックリングが第一選択とされています。初回に硝子体手術を選択する方法は1980年頃より海外で報告されるようになり、当科でも90年頃より導入してきました。当初は深部裂孔、多発裂孔などに適応を限定していましたが、徐々に拡大し現在では赤道部よりも前方の裂孔に対しても選択するようになっています。上方弁状裂孔による剥離に対しては、強膜バックリングと同等の復位率・視力予後であることを既に報告していますが、一方で下方弁状裂孔の場合、強膜バックリングの成績はあまり良くない印象がありました。
今回、1995年から2000年の間に下方弁状裂孔による網膜剥離に対して初回手術を施行した52例についての検討を行いました。術式の内訳は硝子体手術(V群)23眼、強膜バックリング(S群)29眼でした。初回復位率は96%、76%となり、やはりS群の成績が不良でした。初回非復位の原因としては、V群が新裂孔形成であるのに対し、S群では大半が原因裂孔の閉鎖不全でした。S群の中でも、輪状締結を使用した場合復位率が83%であるのに対し、非使用では40%と非常に低い結果となっています。
弁状裂孔形成には通常後部硝子体剥離が関与しており、裂孔発生部位としては上方が大半を占めています。下方に裂孔が形成される場合、硝子体ゲルの重みによる牽引は関与しないため、硝子体の収縮による牽引が非常に強いと考えられます。強膜バックリングではこの強い牽引に対して十分なバックル効果を得ることが重要です。硝子体牽引を直接解除できる硝子体手術の方が良好な成績を示したのもこの点を考えれば当然かもしれません。
以上の結果より、下方弁状裂孔による網膜剥離の場合、硝子体手術を積極的に選択してよいと考えました。強膜バックリングの場合は輪状締結を使用するほうが良いと思われます。今後も硝子体手術の比率が増加していくものと思われますが、若年者の格子状変性内の円孔による剥離などは強膜バックリングの絶対的適応と考えており、症例によって両術式を使い分ける必要があると考えています。
黄斑円孔網膜剥離の手術成績
杉谷 篤彦
強度近視眼の黄斑円孔網膜剥離は黄斑バックル、気体注入法、強膜短縮術、硝子体手術など種々の治療法が行われてきましたが、難治性の網膜剥離であることに変わりはありません。また近年では内境界膜(ILM)剥離を併用することで良好な復位率が得られるとされていますが、その有用性は確立していません。杏林アイセンターでは、MHRDの硝子体手術成績についてILM剥離の有無で検討しました。対象は1999年6月〜2004年5月に初回硝子体手術を施行した38例40眼(男6例7眼・女32例33眼、年齢53〜90歳・平均66歳)で、屈折値は−5D〜−19D(平均−13.6D)、術後観察期間は110〜1455日(平均561日)でした。硝子体手術を行い、後部硝子体剥離を作成後ILM剥離した群25眼(A群)、ILM未剥離の群15眼(B群)に分け比較検討しました。
A群とB群に平均年齢、術前平均視力、平均屈折値において有意差はありませんでした。初回復位はA群22/25眼(88%)、B群8/15眼(53%)で、A群非復位3眼中1眼は強膜短縮、1眼は周辺までの硝子体剥離を追加し復位しました。B群非復位7眼中4眼はILM剥離を追加、1眼は円孔周囲への光凝固で復位しました。最終復位はA群24/25眼(96%、視力平均0.11、SO下復位2眼)、B群13/15眼(87%、視力平均0.09、SO下復位1眼)、最終復位例での2段階以上の視力改善はA群83%、B群77%で過去の報告とほぼ同様な結果でした。術後OCT検査できた復位21眼(A群15眼、B群6眼)で円孔閉鎖はA群6眼(40%)に対しB群では1眼のみでした。A群で閉鎖率が高いようにも見えますが少数例でもあり統計学的有意差は認めておりません。また円孔閉鎖、残存は視力改善に影響しませんでした。ILM剥離の役割は@残存皮質と膜様組織の一塊にした除去が可能AILM上の細胞の除去とILM自体の収縮による牽引も解除できるB網膜の伸展性が増加することが挙げられます。
今回の結果でも初回復位率が向上し、さらに再手術例でのILM剥離の有用性が示されました。ただし円孔閉鎖率、視力改善に関与するかどうかは現在症例数を増やし検討中です。
樋田 哲夫教授
二神 創 平岡 智之 杉谷 篤彦
川真田 悦子 三木 大二郎講師 三井 恭子
平形 明人教授
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外来パラメディカル・スタッフ紹介
<視能訓練士>
堀井史代 新井智恵 服部杏子 宮下順子
島田安希子 江崎愛 藤森重人
<看護師>
井田裕美子 野村久美子 荒川みどり
<看護師・ヘルパー>
安部晶子 前川亜樹 坂田奈緒 今井優子
海老澤美奈 井上美由紀 中村暁美 山田敦子
<ロービジョン>
新井千賀子 尾形真樹 田中恵津子
<写真室>
峯村純枝 渡邉望
<受付>
村田明美 中島愛 福島未華
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イベント情報
〈OPEN CONFERENCE〉
国内外の先生にインフォーマルな場で臨床、研究テーマについて講演していただくシリーズです。
外来棟の10階第2会議室で6:30PMから行われます。アイセンター外の先生方も是非ご参加下さい。
10月18日(水) 「新しいマルチフォーカルIOLの時代」
ビッセン宮島弘子先生 (東京歯科大学水道橋病院眼科教授)
<第8回西東京眼科フォーラム>
19:00〜21:00 場所:吉祥寺第一ホテル若草の間
11月22日(水) 教育講演:「AMDのABC」
岡田アナベルあやめ先生 (杏林大学医学部眼科助教授)(生涯教育認定事業・2単位)
編集部より
第7回ロービジョン学会は小田教授が学会運営会社を使わずに大学構内で手作りの素晴らしい学会をされました。最終日には市民公開講座も企画され、この内容はNHKニュースで全国に流されました。網膜硝子体班は各人が様々な雑用を抱えている上に緊急手術が多く、学会発表の時間がとれない状況にあります。来年度はスタッフが増える可能性があります。臨床研究のみならずラボの方の充実に向けて動き始めたいと考えています。<H.T.>
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