◆緑内障外来の現況 (吉野 啓)
◆新しい緑内障診療ガイドライン(栗原 崇)
◆ベバシズマブ(アバスチン)を使用した
  血管新生緑内障に対する線維柱帯切除術(稲見 達也)
◆フェロー紹介
◆第19回大学対抗野球大会 準優勝!
◆イベント情報
◆編集部より

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緑内障外来の現況   


吉野 啓

 現在、緑内障外来は私と稲見達也先生、栗原崇先生の3人体制である。ご存知の通り緑内障は病気の特性上患者さんの数が減ることがない。まして真面目で几帳面な患者さんが多い緑内障外来はキャンセルも少なく常に満員御礼状態である。この患者数に対して3人体制は少々厳しいなと感じる昨今である。もちろん3人で全ての業務を賄えるわけはなく、特に病棟業務においては臨床専攻医の先生方の多大な協力を得ており、日頃より大変感謝している。彼らの中から将来緑内障専門医を志す者が出てくれればと大いに期待している。
緑内障外来の患者の増加は、近隣の先生方からの紹介患者の増加によるところが大きいが、この数年、手術件数の増加も顕著である(図1)。ここ5年で手術件数は約3倍に急増した。これには他にもいくつかの要因があるが、ひとつは定時手術が全て外来手術室で行えるようになった事である。外来手術室はアイセンターに隣接し、眼科病棟とも直結しているため、中央手術室を使用していた頃と比べると患者さんの入れ替えは格段に早くなった。もうひとつは稲見先生がsurgeonとして完全に独立したことである。これにより並列での手術が可能となり、最近では1コマで最大7件までの緑内障手術が行われるようになってきている。
手術内容も常に工夫を凝らし、変化、進化を心掛けている。また、手術部門における最大の変化はマイトマイシンC(MMC)の扱いである。長らくMMCの使用に否定的な立場をとっていたが、現在ではレクトミーには全例MMCを使用している。但し、MMCレクトミーによる無血管濾過胞量産を容認している訳ではなく、無血管濾過胞を形成しないMMCレクトミーの完成を目指し種々の工夫を凝らしている。この試みはある程度の成果を上げており、現在学会などで徐々にその成果を報告している。また、最近、抗VEGF抗体bevacizumab(商品名Avastin)が注目され、血管新生緑内障に対する有用性が期待されている(詳しくは稲見先生の担当ページをご覧下さい)。
 今後も臨床が第一、患者さんのためになる医療を提供していく事が使命と考えているが、ここ数年、少ないながらも原著論文も何本か出すことができた。ゆっくりではあるが、患者さんの利益に直結するような臨床研究も着実にすすめていきたいと考えている。



図1:杏林アイセンターで行われた緑内障手術件数

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新しい緑内障診療ガイドライン
栗原 崇

 2003年に日本緑内障学会による初めての緑内障診療ガイドラインが作成されてから3年が経ち、昨年10月に緑内障診療ガイドライン第2版が作成されました。諸先生方もご存知のとおり今回の改訂では、1.緑内障を緑内障性視神経症と定義した。2.primary angle-closure(PAC)=原発閉塞隅角症の概念を取り入れた。3.緑内障性視神経乳頭・網膜神経線維層変化判定ガイドラインを追加した。この3点が主な改変点です。
 従来の緑内障診療ガイドラインでは、「原発閉塞緑内障では、眼圧上昇あるいは視神経の変化をきたしていない初期症例を含めてすべて原発閉塞隅角緑内障とする」と定義されていました。一方、国際標準であるInternational Society of Geographical and Epidemiological Ophthalmology(ISGEO)の分類では、1.primary angle closure suspect(PACS):機能的隅角閉塞が疑われるが、器質的隅角閉塞は認められない。2.primary angle closure(PAC):機能的隅角閉塞がある。もしくは器質的隅角閉塞が認められるが、緑内障性視神経症は認められない。3.primary angle closure glaucoma(PACG):PACの所見に加え、緑内障性視神経症が認められる。と隅角所見及び眼底視神経所見により3群に分類しております。ガイドライン第2版ではISGEOのPACが追加され、また狭隅角緑内障の用語は用いるべきではないとしており、欧米の緑内障ガイドラインを意識したものとなりました。
 現在、当緑内障班はガイドラインに則った診療及び治療を心掛けていますが、その一方ガイドラインには限界があるとも考えております。今回追加された緑内障視神経乳頭・網膜神経線維層変化判定ガイドラインなど非常に有用なエビデンスもありますが、一方では緑内障の定義として、ガイドラインでは「緑内障は視神経と視野の両方に特徴的変化を有するもの」としています。しかし日常の外来では現在の視野検査では検出できない極早期の緑内障症例を数多く認めるのが実際です。視野検査結果は目安・経過観察の指標などにはなりますが、例えば今回追加されたPACとPACGを厳密に分類することはできません。視野検査の精度は現在の緑内障確定診断における大きな問題点の一つではないかと改めて感じております。


ベバシズマブ(アバスチン)を使用した
血管新生緑内障に対する線維柱帯切除術
稲見 達也

 増殖糖尿病網膜症、網膜中心静脈閉塞症、眼虚血症候群などに続発する血管新生緑内障(NVG)は周知のように難治性緑内障の代表であり、薬物治療、網膜光凝固にて落ち着く症例は比較的少なく、線維柱帯切除術(trabeculectomy)を施行せざるを得ないのが実状です。
近年マイトマイシンCを術中に使用することによって、術後成績の向上は認められたものの、無血管濾過胞とそれに伴う房水漏出や晩発感染などの問題もあり、また特にNVGの場合、術中術後の新生血管からの出血による強膜開窓部の閉鎖により房水の流出が阻害され、充分な眼圧下降が得られない場合も多く、非常に苦慮させられます。
これに対し、当院では最近ベバシズマブ(アバスチン)を術前に使用する事によって一時的に新生血管を抑え、その上でtrabeculectomyを施行する試みを始めています。ベバシズマブは抗vascular endothelial growth factor(VEGF)抗体であり、転移性大腸癌の治療などに使用されていますが、アメリカでは糖尿病網膜症、加齢性黄斑変性症などの治療に応用されており、良好な結果が報告されています。本邦ではまだ未認可ではありますが、当院では倫理委員会の承認を得て使用しています。
具体的にはアバスチンを0.06 ml経毛様体扁平部的に硝子体内に注入し、その1〜2週間後にtrabeculectomyを施行しております(症例によっては時間的余裕のない場合もありますが)。
まだ実施してまもなくであり、長期的な経過はこれから検討していく段階ですが、印象としては術直後の出血は少ないように思われます。しかしながらベバシズマブの新生血管抑制効果は2〜3ヶ月とも言われており、当院でも術後3ヶ月で硝子体出血を起こした症例が一例認められました。
 長期的にみると、trabeculectomy後の眼圧コントロールを左右するのは、いかに良好な濾過胞を形成、維持するか、という事であり、それらを阻害する主因としては結膜下の線維性増殖による癒着が大きく、新生血管による出血は術直後の一時的な問題かもしれませんが、より良好な結果を得るためには有用である可能性が高いと期待できます。今後さらに症例を増やして検討していきたいと考えておりますが、新生血管を抑えるためには然るべき時期に適切なPRPを充分に施行しておく事が前提である事を最後につけ加えておきたいと思います。


緑内障斑: 稲見 達也、 吉野 啓、 栗原 崇

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フェロー紹介

廣田 和成

 2006年の10月より網膜硝子体手術の研鑽のため杏林大学に勤務させていただいています。研修医の頃より、網膜硝子体外科医を志して、色々な施設で勉強させていただきましたが、眼科医として8年目という、ちょうど専門を深めるのに適した時期をここでおくれることを非常に幸運に思っています。よろしくおねがいします。

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第19回大学対抗野球大会 準優勝!

日時:2006年5月21日(日),9月3日(日) 於:明治製菓(株)百合ヶ丘総合グラウンド



イベント情報
〈OPEN CONFERENCE〉国内外の先生にインフォーマルな場で臨床、研究テーマについて講演していただくシリーズです。
外来棟の10階第2会議室で6:30PMから行われます。アイセンター外の先生方も是非ご参加下さい。

2月28日(水)  「視覚と目の異常感への心療学的アプローチ」
           気賀澤 一輝先生 (杏林大学医学部眼科非常勤講師)

3月 7日(水)  「緑内障薬物療法ー現状と未来」
           相原 一先生 (東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学講師)


5月30日(水)  「網膜変性疾患:診療上の注意点」
           柳 康雄先生 (東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学)

<第47回東京多摩地区眼科集談会>
14:00〜16:30 場所:杏林大学大学院講堂
4月 7日(土)  教育講演:「角膜内皮細胞−日常診療に役立つ知識−」
           高橋 浩先生 (日本医科大学眼科教授)(生涯教育認定事業・2単位)


編集部より
 緑内障専門外来は夕方6時すぎまでかかる、大変な患者さんの数をこなしている外来です。患者さんを減らすことが難しいので、スタッフが増えないことにはどうしようもありません。何とかしなくてはと頭を痛めております。
 アバスチンは虹彩、網膜の血管新生だけでなく黄斑下CNVにも効果があるようですが様々な問題を含んでいます。慎重に患者さんを選んで使いはじめています。〈 T.H. 〉

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