2010年 Vol.31 "春 号"目 次Newsleter Home臨床教授就任の挨拶岡田アナベルあやめ杏林大学医学部に着任して約11年が経ちました。最初の頃は、ぶどう膜炎(眼炎症)外来および加齢黄斑変性(黄斑疾患)外来の両診療業務を立ち上げるために、様々なハードルを乗り越える必要があり、時の経つのが遅かったように感じていました。しかし、仕事が軌道に乗り始め、臨床や研究成果も発表できるようになるにつれ、ここ数年は、時間があっという間に経った気がします。全ては、故樋田哲夫名誉教授、平形明人主任教授、そして教室の医師、パラメディカルスタッフ、同門会の先生方のご支援のお陰で、この場をお借りして深く感謝申し上げます。また、杏林アイセンターで、樋田先生と一緒に仕事をするチャンスを与えていただいたことは、人生における筆舌につくせないほどの幸せだったと考えております。天国にいらっしゃる樋田先生に、そのように申し上げたいと思います。 平成21年10月に、杏林大学医学部眼科の臨床教授に就任させていただきました。私のなかでは、これまでの仕事を認めていただいたという気持ちと、「これからが大変!」という気持ちが相半ばしています。後者は、特にジャーナルや学会の仕事が増えていることで、医師としての本来の仕事が通常通りにできなくなるのではという懸念です。何とか効率よく「内」(杏林大学眼科学教室)と「外」(国内外の委員会など)のバランスを取るように頑張りたいと思います。また、2014年に東京でWOC(国際眼学会)が、日本眼科学会総会とともに開催されます。その実行委員としも頑張る所存です。 今後とも皆様方のご支援と叱咤をいただければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。 以下に私の略歴を紹介させていただきます。 略 歴
1983年 Harvard大学・生化学専攻 卒業(A.B.) 角膜班の活動紹介と杏林アイバンク工藤かんな角膜班は、現在チーフの井之川先生と2009年に東京歯科大学市川総合病院より帰室した工藤の2名が担当しております。角膜専門外来は毎週火曜日の午後に行っております。2ヶ月に一度の割合で東京歯科大学市川総合病院より島﨑潤教授に来ていただき難症例の検討も行っております。 1. 外 来角膜外来では、角膜および結膜におけるあらゆる疾患を対象にして診療を行っております。 ドライアイに対する治療として点眼治療の他に涙点プラグ、重症例には涙点閉鎖を行っております。また、液状(コラーゲン)プラグ(キープティア®)を導入し、涙点プラグが適さなかった症例でも使えるようになりました。 角膜潰瘍に対する治療では、院内製剤が充実しており真菌感染やアカントアメーバ感染の治療にも対応しております。 眼のアレルギー疾患には、花粉症に代表される季節性アレルギー性結膜炎から、角膜上皮障害やそれに伴う視力障害を合併しやすい春季カタル、アトピー性角結膜炎などの重症例まで様々な病態があります。角膜外来では重症の春季カタルやアトピー性角結膜炎の治療として現在の炎症の状態に合わせた治療法を選択し、改善・治療後の維持や再発予防なども含め総合的に治療を行っております。 また、円錐角膜、不正乱視、角膜移植術後など眼鏡では十分な視力矯正が得られない症例、通常のコンタクトレンズでは装用できない症例に対するコンタクトレンズ処方も行っております。 2. 手 術翼状片に対する治療として、初発例においては翼状片切除+自己結膜遊離弁移植を標準術式とし、再発例では羊膜移植や手術中のマイトマイシンC塗布も施行しております。結膜弛緩症に対する治療として結膜切除や結膜固定術を施行しております。帯状角膜変性症に対する治療としてEDTA塗布療法を施行しております。 角膜移植では、全層角膜移植(白内障同時手術も含む)・深層表層角膜移植(図1)・表層角膜移植などが当院での代表的な治療です。角膜移植手術は、ながらく全層角膜移植が大半を占めていましたが、現在は必要な部分のみを移植する角膜パーツ移植が増加しております。深層表層角膜移植に関しては以前より行っていましたが、角膜内皮移植は、これまで他院へ紹介させていただいておりました。今後は、当院でも対応可能となり準備段階に入っております。また、網膜硝子体部と連携して、角膜移植と網膜硝子体同時手術が必要な難治症例にも一部対応しております。角膜移植の件数としては、2007年度8件、2008年度7件、2009年度は12月現在までに13件施行しております。対象疾患も水疱性角膜症、角膜混濁、角膜変性症、円錐角膜、角膜穿孔など多彩な症例となっております(図2)。現在の待機患者数は12名で、ここ数年は年間10件程度の手術ができておりますので、約1年程度の待ち時間となっております。また、早急に手術を希望される方には輸入角膜で手術を行える東京歯科大学市川総合病院や慶應大学病院を紹介させていただいております。
図1 角膜格子状変性に対する深層表層角膜移植 スティーブンス・ジョンソン症候群、眼類天疱瘡、化学傷、熱傷といった重症眼表面疾患に対する培養上皮移植を始めとした眼表面再建術や、顆粒状角膜変性症、帯状角膜変性症などに対するPTKなどに関しては、東京歯科大学市川総合病院などと連携の上でスムーズに治療を開始できる体制を整えております。 図2 角膜移植件数 3. 杏林アイバンク杏林アイバンクは、平成15年10月10日に日本で53番目にできた2番目に新しいアイバンクです。東京には慶大眼球銀行・順天堂アイバンク・読売光と愛の事業団眼球銀行とすでに3つのアイバンクがありますが、すべて都心に集中しています。そこで、アイバンクのない西東京一帯を杏林アイバンクでカバーすることによって、より多くの方に眼球を提供していただくことをめざしております。 現在の杏林アイバンクの運営は、杏林大学医学部付属病院の事務と組織移植センターの協力を得て杏林アイセンターの角膜班が中心になっておこなっております。発足以来22件44眼の尊い献眼をしていただき患者様の視力回復に役立っております。眼球提供登録者数も、少しずつではありますが増え続けております。 杏林大学病院内からの献眼の他に、昨年度から自宅や院外出動を開始しております。眼球提供には迅速に対応できるよう心がけております。杏林アイバンクとしては、献眼数の増加を第一の目標にあげております。院内はもとより地域や近隣の病院などへの啓蒙活動を強化し、より多くの方にアイバンクを知っていただくことによって献眼数増加という目標に向かい進んで行きたいと思っております。 まだまだ未熟な面もありますが、開業医の先生方から御紹介いただいた患者様をいつでも受け入れ迅速に対応できるよう、また杏林アイバンクを発展させることができるように日々精進していく所存です。今後ともよろしくお願い申し上げます。 杏林アイバンクポスター [PDF 932KB] ダウンロード このページの先頭に戻る樋田先生のプレート紹介永本敏之
昨年、杏林アイセンターの外来入口付近に、樋田先生のメモリアルプレートが設置されました。これは、杏林アイセンターの設立と発展ばかりでなく、我が国の眼科学に大きく貢献された先生を讃えて、杏林同門会と教室員から寄贈されました。プレートには彫刻家である山田朝彦氏(日展会員、日本彫刻会会員で日本金属工芸研究所取締役会長)による樋田先生の上半身の半立体的彫像が据えられています。そして「網膜硝子体手術の指導者であった樋田哲夫先生は、我国初のアイセンター設立(1999年)の礎を築かれました。2008年2月26日教授在職中に帰天されましたが、樋田先生の精神は今もアイセンターに生き続けています。」という文字が刻まれています。彫像の中の表情は樋田先生らしい微笑みを湛えていて、私たちを暖かく見守ってくれているように見えます。皆様も一度プレートの中の樋田先生に会いに来てはいかがですか?(写真は昨年8月1日の除幕式の記念写真です) このページの先頭に戻るアイセンターフォトアルバム
NOW2009にてポスター発表 このページの先頭に戻るイベント情報OPEN CONFERENCE開催場所:杏林大学病院 外来棟 10F 第2会議室 開催日時:2010年2月17日(水) 19:30 開催日時:2010年3月3日(水) 18:30 第1回多摩眼科連携セミナー開催日時:2010年4月3日(土) 14:00-16:30 2nd Eye Center SUMMIT開催日時:2010年5月8日(土) 17:30-19:40 編集部からのコメント岡田教授就任おめでとうございます! 我が国の眼科のためにも、岡田先生の特徴をさらに発揮して、明るく活発なアイセンターを牽引してください。また、角膜パーツ移植が進歩するなかで、手術名手の井之川先生を中心に角膜班も東京歯科大島崎教授にご指導いただきながら症例数が増加しています。角膜難治疾患の治療やアイバンクの運営に奮闘しています。患者さんのご紹介や献眼登録などのご支援をよろしくお願いします。(AH) このページの先頭に戻る |