角膜外来のレポート

角膜部:井之川 宗右、工藤 かんな

角膜外来では、ドライアイから手術や入院治療の必要な症例まで、あらゆる眼表面疾患に対して治療をおこなっております。スタッフとして常勤のチーフ井之川と東京歯科大市川病院へ留学中の工藤で火曜午後に角膜専門外来をおこなっております。2ヶ月に一度の割合で東京歯科大市川病院より島崎潤教授に来ていただき、難症例の検討もおこなっております。

外来では、重症ドライアイに対する涙点プラグや涙点閉鎖を行っております。角膜潰瘍に対する治療では、院内製剤の充実によって真菌感染やアカントアメーバ感染にも対応可能になりました。

手術では、翼状片の初発例において翼状片切除+遊離結膜弁移植を標準術式とし、再発例では、羊膜移植やマイトマイシンC併用療法も施行しております。結膜弛緩症に対する治療として、結膜切除や結膜固定術も施行しております。2007年度は翼状片初発例19眼・再発例2眼を施行しており、2008年度は現在までに4眼を施行しております。

角膜移植では全層角膜移植(白内障同時手術も含む)・深層表層角膜移植・表層角膜移植などが当院での代表的な治療ですが、角膜内皮移植・培養上皮移植・PTKなどに関しても、東京歯科大市川病院などと連携の上でスムーズに治療を開始できる体制を整えております。

角膜移植の件数としては、2006年度が11眼・2007年度が8眼施行できており2008年度は現在4眼施行しております。対象疾患も水疱性角膜症・角膜混濁・角膜変性症・角膜穿孔と多彩な症例となっております。現在の待機患者は約20名で、ここ数年はコンスタントに年間10件程度の手術ができておりますので、2年程度の待ち時間となっております。また早期に手術を希望される方には、輸入角膜で手術を行える東京歯科大市川病院や慶応大学病院を紹介させていただいております。

角膜格子状変性に対する深層表層角膜移植

翼状片に対する遊離結膜弁

またアイバンク活動も角膜斑が中心となって行っております。杏林アイバンクは、平成15年10月10日に日本で53番目にできた2番目に新しいアイバンクです。東京には慶大眼球銀行・順天堂アイバンク・読売光と愛の事業団眼球銀行とすでに3つのアイバンクがありますが、すべて都心に集中しています。そこで、アイバンクのない西東京一帯を杏林アイバンクでカバーすることによって、より多くの方に眼球を提供していただくことを目指しております。

杏林アイバンクは、発足以来18件36眼の尊い献眼をしていただき、患者様の視力回復に役立っておりますが、組織の未熟さと人材の不足により杏林大学病院内からの献眼のみが限界となっており、十分な啓蒙活動も行えなっておりませんでした。本年度より西東京の病院や自宅へ院外出動もしておりますので、今後の献眼数の増加に期待しております。

これからも西東京一帯からの尊い献眼の意志を受け止められる体制を続け、啓蒙活動を行うことによって、より多くの方にアイバンクを知っていただくことによって、献眼数の増加という目標に向かい進んで行きといと思います。

角膜外来と杏林アイバンクを発展させることで、開業医の先生方が困ってしまうような角膜疾患をいつでも受け入れ、きれいに治療してお返しすることや、杏林アイセンターだからこそ可能な角膜移植と網膜硝子体同時手術などをおこなうことにより他の角膜専門病院からも紹介患者を受けるような角膜外来を目指しております。さらにアイバンク啓蒙活動を地域や近隣の病院へ積極的に行い献眼数を増やす事で、迅速な手術に対応できるよう努力いたしますので、御協力の程よろしくお願いします。

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