黄斑疾患外来の紹介

黄斑疾患部:岡田 アナベル あやめ、杉谷 篤彦、田中 伸茂
山本 亜希子、谷内 修太郎

黄斑外来は主に加齢性黄斑変性症(AMD)、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)、高度近視眼などに合併する新生血管黄斑症を主として対象としています。1999年岡田アナベルあやめ准教授がアイセンターに就任しそれまで網膜硝子体グループや各外来主治医がばらばらに経過観察していた患者を水曜日午後の専門外来に集め治療を開始しました。その後外来患者数は2005年度1911人、2006年度2013人、2007年度2435人と増加しています。黄斑外来での検査機器、治療法は刻々と変化しているのが現状ですが、現在黄斑外来で行われている治療について簡単に説明致します。

① PDT 欧米では2002年から開始、2004年国内承認されました。日本人は欧米人と比較しAMDに占めるPCVの割合が高く、PDTがより有効であるとされており、今後も治療の選択肢として重要な位置を占めると考えられます。厚生省の指導で初回治療時には入院が必要ですが、今後は外来治療が選択可能になる予定です。しかし大きな色素上皮剥離や新しい出血を伴った症例ではPDT後それぞれ色素上皮裂孔や出血の拡大、硝子体出血を併発する場合があり、治療法の原理と疾患の病態を把握し適切な治療法を選択する必要があります。アイセンターでの治療症例は2005年に114眼、2006年に143眼、2007年に175眼と増加傾向にあります。

② 抗VEGF(血管内皮細胞増殖因子)療法→PDTが血管閉塞療法(血栓形成)であるのに対し抗VEGF療法は血管新生抑制を原理としています。薬剤はVEGFアプタマーであるpegaptanib(Macugen)、抗VEGF抗体であるbevacizumab(Avastin)、抗VEGF抗体のFabフラグメントであるranibizumab(Lucentis)があります。当科ではMacugen、 Lucentisはそれぞれ2004年7月、2005年4月から治験に参加しLucentisは来年春には保険適応となる予定です。Avastinは当院倫理委員会の承認を得て2006年11月から臨床試験薬としてアイセンターでも使用しています。黄斑外来に限れば2008年6月現在計190眼(内訳 AMD 81眼, PCV 53眼, 高度近視 42眼, 網膜内血管腫状増殖 6眼, 網膜色素線条症 4眼, punctate inner choroidopathy 2眼, 特発性2眼)に硝子体内注射を施行しています。図2は高度近視(33歳女性)で投与前後の眼底写真・フルオレセイン蛍光造影(FA)です。本症例では投与後視力は0.4から1.0に向上しています。硝子体内薬剤投与は今後重要な治療法の一つとして増加するものと思われますが、その副作用・合併症、特に眼内炎等には注意が必要です。また、黄斑外来でAvastin投与直後に眼圧を測定したところ50 mmHg以上となる症例を経験しました。検討を加え2008年第112回日本眼科学会で山本亜希子先生が発表しました。注射直後には平均28 mmHgと有意に上昇、30分後には平均17 mmHgと低下するものの、60分後でも40 mmHg以下に下がらない症例もあり、硝子体内注射では術後、眼圧のモニタリングが必要であると考えられました。

図1 外来処置室でのAvastin眼内注射

(a) (b)

(c) (d)

図2 33歳女性 高度近視
(a) Avastin 投与前 眼底写真 (b) Avastin投与前 FA
(c) Avastin 投与後 眼底写真 (d) Avastin投与後 FA

③その他:症例により経瞳孔温熱療法(TTT)あるいはトリアムシノロンアセトニド(ケナコルト)のテノン嚢下投与も行われております。これらの治療は、AMD以外の疾患に合併する脈絡膜新生血管の症例(主に若年者)、中心窩外で再発した症例(PDT後でも)、視力良好な症例(例えば高度近視に合併するような小さな新生血管)、または初回PDTのために入院できない場合は検討しております。両方の治療については、侵襲が少ないため初回治療として試みて、効果不十分の場合には次AvastinやPDTを用いるパターンが多いです。また、PDT単独で効果が不十分の症例には、次にトリアムシノロンテノン嚢下投与をPDTに併用することもあります。

黄斑外来は現在岡田准教授以下、田中伸茂、杉谷篤彦、山本亜希子、谷内修太郎医師が水曜日午後4診体制で担当し待ち時間が短くなるように工夫をしています。しかし、光干渉断層計(OCT)、インドシアニングリーン蛍光造影、FA等必要な検査も多く、待ち時間が長くなるのが現状ですが、必要な検査である旨を説明し納得していただいております。今後も患者さんの負担をできるだけ減らしつつ満足のいく高水準の医療を提供していく所存です。今後ともよろしくお願いいたします。

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