神経眼科外来のレポート

神経眼科:渡邊 敏樹、気賀沢 一輝

アイセンターの神経眼科外来は、気賀沢と渡辺(敏樹)の2名が担当しています。表示している外来日は、偶数週の金曜日の午後ですが、渡辺は毎週金曜日の午前中、一般外来と神経眼科外来を兼ねた外来を担当しています。これまでに取り扱った疾患は、以下の通りです。視神経炎50例、身体表現性障害45例、眼球運動障害31例、原因不明視神経萎縮15例、眼瞼痙攣12例、虚血性視神経症10例、甲状腺眼症7例、眼瞼下垂6例(重症筋無力症を含む)、偏頭痛6例、瞳孔異常6例、偽脳腫瘍5例、特発性眼窩筋炎5例、眼振5例、外傷性視神経症4例、うつ病4例、AZOOR(疑)3例、occult macular dystrophy(疑)2例、遺伝性視神経萎縮2例、鞍結節髄膜腫2例、拍動性眼球陥凹2例、視神経血管芽腫1例、トウレット症候群1例、偽うっ血乳頭1例、輻輳不全1例、下方注視麻痺1例、等々。視神経炎は血液検査、MRIなどの画像検査を行った上で、risk-benefit balanceを考慮し、慎重にステロイド・パルス療法を適用しています。原因としては特発性が最多で、その治療結果は良好です。ただ、中には重篤な視力障害を残す症例もあります。その分かれ目が何か、これまでは不明だったのですが、近年抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎の存在が明らかになり、その点にも光が当たるようになってきました。このタイプの視神経炎の病態は、従来の多発性硬化症の脱髄ではなく、軸索を巻き込む強い炎症であるため、早期から強力な抗炎症、抗免疫療法が必要です。当外来では、新潟大学、金沢医大との共同研究により、まだ一般化していない本抗体の検査を行い、2例発見することができました。今後も、視神経炎については最先端の知見を元に、最高レベルの診断と治療に当たっていきたいと考えています。身体表現性障害とは精神科用語で、転換性障害(心因性視力障害など)、疼痛性障害、心気症、身体醜形障害、セネストパチー(体感症)などが含まれます。これまで、器質的な異常がみられない眼症状には、心因性あるいは不定愁訴という曖昧な診断が下されてきましたが、その背後に隠れている精神的な障害を見抜き、その対処の方向性を示す必要があると思われます。その診断能力の向上のため、気賀沢は日本神経眼科学会理事長の若倉雅登先生(井上眼科病院長)と、昨年心療眼科研究会を立ち上げ(眼科専門医生涯教育認定事業NO.20015)、その普及と研究に努めています(心療眼科研究会ホームページ:http://www2.odn.ne.jp/sinryouganka/)。アイセンターは眼科のすべての領域について専門外来を設置するという理念がありますので、神経眼科外来も時代に即したレベルを維持しながら、特徴も備えていきたいと考えています。そのためには、専門家どうしの情報交換は欠かせませんので、毎年必ず、神経眼科真鶴セミナーと日本神経眼科学会には演題を提出し、難治症例についての幅広い意見収集を行っています。来年は、真鶴セミナーを主催することにもなっており、臨床のみならず、学会への貢献にも努力していきたいと考えております。

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