網膜硝子体部のレポート |
網膜硝子体部:平形 明人、三木 大二郎、井上 真
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網膜硝子体グループは平形明人主任教授を中心に6月から新体制となりました。平形教授を筆頭に総勢9人のメンバーです。他大学からの国内留学も受け入れており、現在は東京医科歯科大から小川学先生と順天堂大から谷内修太郎先生が臨床フェローとして参加しています。また昨年はブラジル、サンパウロからRonaldo Yuiti Sano先生が、韓国Gachon University Gil Medical CenterからDong Heun Nam先生がお見えになりました。網膜硝子体手術の年間手術件数は徐々に増加しており、2006年で1018件、2007年で1099件と年間約1000件で日本有数の手術件数です(図1)。特に故樋田哲夫教授の専門であった網膜剥離の症例が総数の約5割弱と多く、多施設から難治例をご紹介頂いております。また杏林アイバンクと連携して、角膜移植との同時手術の必要な難治症例に対応できるように体制を整えています。
図1 黄斑部疾患に対しては、切開創が小さくより回復の早い25G(切開創0.5mm)や23G(切開創0.7mm)の小切開硝子体手術も積極的に取り入れています。そこでアイセンター奥の外来手術室を利用して、日帰り硝子体手術も始めました。白内障の外来手術が軌道に乗っていたため、そのまま硝子体手術の一部を移行しました。ベッド待ちがなく、日にち指定で手術予定が組めることがメリットです。術前後を研修医にみせられない欠点もありますが、病棟業務を省略できるため研修医の負担を軽減できる利点もあります。増殖糖尿病網膜症や腹臥位が必要な黄斑円孔などにも日帰り硝子体手術を行っており、術前に看護師と一緒にきっちりオリエンテーションを行なっているので、入院での手術成績とはかわりありません。杏林大学病院は三次救急を積極的に取り入れているため、穿孔性眼外傷や眼内炎など緊急手術を要する症例が多く、また網膜剥離の緊急手術も多いため、限られたベッド数で回すにはどうしても制限があります。手術をお待ちの患者様にご迷惑をかけぬよう、予定の入院手術が組みにくい状態の打開策になるのではと考えております。 昨年にスペクトルドメインOCTであるツアイス社cirrusを導入でき、タイムドメインOCTより高速で詳細な黄斑部観察が可能となりました。最近は乳頭ピット黄斑症候群に合併した網膜分離症にガスタンポナーデを用いない硝子体手術や緑内障様視神経乳頭に合併した乳頭ピット黄斑症候群様網膜分離症に対しての手術成績の報告を行いました。スペクトルドメインOCTは、その病態解明にさらに貢献すると考えます( 図2)。また高度近視による網膜分離症の研究会にも参加し、その病態解明に力を入れています。Association for Research in Vision and OphthalmologyやWorld Ophthalmic Congressにも眼内炎の当科での治療成績や網膜動脈閉塞と頸動脈閉塞の関係などを発表しました。今年は故樋田哲夫教授が学会長である日本臨床眼科学会を予定しており、それに向けて、臨床成績をまとめています。
図2 |