先進的医療への取り組み
角膜移植
杏林アイセンターが西東京唯一のアイバンクとして承認されており、角膜提供者が少しずつ増加しています(現在は休止中)。しかし、アイバンク提供が少ない現状と待機患者の増加に対応するため、平成23年から輸入角膜を利用できる制度を開始し、角膜移植症例数が増加しています。角膜内皮細胞が健常であれば全層角膜移植より合併症の少ない深層角膜移植を選択する例も増えてきました。水疱性角膜症に対する角膜内皮移植術、難治性角膜疾患に対する羊膜移植や角膜輪部移植も行っています。
特殊な白内障手術
チン小帯脆弱例や一部断裂例にはカプシュラーテンションリングを挿入することで術中のチン小帯断裂を防止し、眼内レンズの嚢内固定ができるようになりました。多焦点眼内レンズ、トーリック眼内レンズなどの付加価値眼内レンズにも希望者には検討して施行しています。
小切開硝子体手術
小切開(23、25、27ゲージ)硝子体手術が普及し、ほとんどの症例で25か27ゲージ手術を行っています。また、術中OCTも可能となり、低侵襲の硝子体手術を目指した手術方法も検討しています。手術終了時の切開創縫合が少なくなり、前眼部炎症の軽減などによって術後視力回復が早くなりました。
抗VEGF製剤(ルセンティス®、アイリーア®、アバスチン®)の応用
加齢黄斑変性症や悪性近視眼に合併する脈絡膜新生血管、網膜静脈絡膜に合併する黄斑浮腫、糖尿病網膜症に対し、抗VEGF薬は保険適応となり治療の1stチョイスとして施行しています。さらに、血管新生緑内障、難治性増殖糖尿病網膜症における新生血管の減少を目的に、倫理委員会の承認の下、患者にも十分なインフォームドコンセントを行ったうえで使用しています。
加齢黄斑変性症に対する治療
抗VEGF療法(ルセンティス®・アイリーア®)を1stチョイスに施行しているが、病態によって光線力学療法や温熱療法も検討しています。新鮮な網膜下出血に対しては硝子体内ガス注入や黄斑下手術で対応しています。
難治性ぶどう膜炎に対する免疫抑制剤、生物学的製剤の導入
従来からのステロイドパルス療法に加えて、難治症例に対して免疫抑制剤、抗TNFα製剤やメトトレキセート剤など生物学的製剤を含む新しい治療法の検討を積極的に行っています。
最先端画像診断機器と画像ネットワークシステムの導入
光干渉断層計(OCT)の導入により黄斑円孔、黄斑上膜、黄斑浮腫など強度近視の牽引性黄斑症に対する手術適応の判定や治療効果の評価法が向上しました。また、視神経乳頭陥凹や神経節細胞層の状態も計測でき緑内障の診断にも有用です。フルオレセインまたはインドシアニングリーンを用いた蛍光眼底検査や網膜色素上皮細胞層の機能評価に有用な眼底自発蛍光を撮影し、様々な眼底疾患の病態を検討しています。網脈絡膜の血流状態を推測するレーザースペックルフローグラフィも導入し、病態把握に努めています。前眼部光干渉断層計も導入され、前眼部疾患に対する先端治療に応用されています。得られた画像は、ネットワークシステムを介して各診察室のモニター上に表示でき、患者への説明に非常に有用です。